新しいツールや進め方を試して、うまくいったとします。ところが、担当者が異動したり、忙しくなったりすると、元のやり方に戻ってしまう。こうしたことは、手順が個人の頭の中にしかない場合に起こりやすくなります。
手順書は、定着のための基本的な手段です。ただ、分厚い文書を作っても読まれません。この記事では、実際に使われる手順書の作り方と、更新の仕組みを説明します。
使われる手順書の条件
手順書が使われなくなる理由は、書かれている内容が古い、探しても見つからない、長くて読む気になれない、のいずれかです。逆に、使われる手順書には、次の特徴があります。
- 1つの作業に1枚:「月末の請求書を作る」のように、作業単位で分ける
- 画面や現物の写真が入っている:文字だけの説明より、実際の画面を見せたほうが迷わない
- 番号付きの手順で、1手順に1つの操作:「選んで保存する」のように複数をまとめない
- つまずきやすい点が書いてある:「ここで〇〇と表示されたら、△△を確認する」
- 誰が見ても同じ場所にある:置き場所を決め、ツールの画面からもたどれる
AI を使う業務であれば、これに加えて、使う指示文(プロンプト)の例と、確認する点を載せます。出力の何を見れば間違いに気づけるのかを書いておくと、安全に使えます。
書く順番と、書く人
手順書は、作業をよく知る担当者が書くのが理想ですが、時間が取れないことが多いものです。次の進め方なら、負担を抑えられます。
- 担当者が、普段どおりに作業するところを、画面を録画する、または画面を写真に撮りながら進める
- 別の人(支援者や同僚)が、記録を見ながら手順書の形に整える
- 作業に不慣れな人が、手順書だけを見て実際に操作してみる
- 詰まったところを手順書に書き足す
3番目の「不慣れな人が試す」が重要です。書いた本人には分かる説明でも、ほかの人には足りないことが多いためです。
更新の仕組みを先に作る
手順書は、作ったあとに古くなります。ツールの画面が変わる、業務の流れが変わる、といった理由です。更新されない手順書は、かえって混乱のもとになります。
次のような仕組みを、作ると同時に決めておきます。
- 持ち主を決める:手順書ごとに、更新の責任者を1人決める
- 見直しの時期を決める:半年に1回など、日付を決めて見直す。手順書の末尾に、最終確認日を書く
- 気づいた人が書き足せるようにする:コメントや連絡の窓口を用意する
- 研修や勉強会で出た質問を、手順書に反映する:質問が多い点は、手順書の説明が不足しているサイン
引き継ぎで困らないために
担当者の異動や退職に備えて、手順書とは別に、次の情報も残します。
- その業務で使っているツールとアカウントの管理者(パスワードそのものは書かない)
- 取引先や関係部署との連絡の相手と、決まりごと
- 年間の繁忙期と、締め日の一覧
- 過去にあったトラブルと、その対応
こうした情報は、マニュアルにしにくいものの、引き継ぎで抜けやすい部分です。業務の棚卸しの一覧表と合わせて保管すると、全体像が見えやすくなります。
手順書の置き場所と形式も、続けやすさに影響します。印刷して机に置く紙と、社内の共有ページに置く電子の文書では、更新の手間が違います。更新が頻繁な内容は電子で、変わりにくい内容は紙でもよい、という使い分けも考えられます。
もう1つの考え方は、手順書を作る作業そのものを業務に組み込むことです。新しい人が入ったとき、その人に手順書を見ながら作業してもらい、分からなかった点を書き足してもらうと、手順書は育ちます。新人が手順書をそのまま使えるかどうかは、手順書の質を確かめるよい機会にもなります。
Renode にできること
Renode では、実際の画面の写真を入れた手順書の作成、不慣れな方による試し読み、研修や勉強会で出た質問の反映、引き継ぎ資料の整備までを支援します。社内で作る場合の、ひな形の提供や構成の確認といった部分的なご相談も承ります。
この記事を書いた人
後藤 碧(Renode株式会社 代表取締役)。中小企業の業務整理、AI の試験導入、業務システムの見直しを、現場に入って支援している。