社内向けの AI 研修を開いたあと、「当日は盛り上がったのに、日常の業務では誰も使っていない」という声を聞くことがあります。研修の内容の良し悪しよりも、研修の前後の設計で差がつくことが多いようです。
この記事では、研修を前・当日・後の3段階に分けて、何を決めておくとよいかを説明します。
研修の前:題材と、使ってよい範囲を決める
まず、題材を自社の業務から選びます。汎用的な例(挨拶文の作成、文章の要約など)は分かりやすい一方で、受講者が「自分の仕事ではどうするか」を考える余地が残ります。次の準備をしておくと、当日の内容が自分の仕事に直結します。
- 受講者に事前アンケートで、「時間がかかっている作業」を1人1つ書いてもらう
- 集まった作業から、共通するものを2〜3個選び、当日の題材にする
- 題材に使う資料は、社外に出せない情報を含まない形に作り替えておく
もう1つ必要なのは、使ってよい範囲の決定です。「どのサービスを使ってよいか」「入力してはいけない情報は何か」が決まっていないと、受講者は学んだことを業務で使えません。ルールづくりについては、別の記事「AI を使うときの社内ルールは、3つの線引きから決める」を参照してください。
当日:見るだけでなく、手を動かす時間を長く取る
講義と実習の配分は、目安として半分ずつ、可能なら実習を多めにします。実習では、事前に集めた題材を使い、受講者が自分のパソコンで実際に指示文を書き、出力を見て直すところまで行います。
当日、次の3点を意識すると定着しやすくなります。
- 失敗例を見せる:AI が事実と異なる内容をもっともらしく出力する場合があることを、実際の出力で確かめます。確認を怠らない習慣は、体験でしか身につきません
- 指示文を持ち帰らせる:実習で作った指示文を、その場で共有の場所に保存してもらう
- 翌週にやることを1つ決める:「明日の報告書の下書きで1回使う」のように、小さく具体的な宿題を各自で書く
研修の後:続ける仕組みを置く
定着するかどうかは、研修の後の2か月ほどで決まります。次のような仕組みを置きます。
- 共有の場所:うまくいった指示文と使い方を貯めるページ。誰でも書き足せるようにする
- 相談の窓口:分からないときに聞ける人(社内の1人か、外部の相談先)を決めておく
- 短い振り返り:研修の2週間後と1か月後に、30分程度の場を持つ。使えた場面と使えなかった場面を、受講者が順に話す
- 管理職の関わり:部署の長が、会議などで「使ってみてどうだったか」を聞く。上の立場の人が関心を示すと、使う側の安心感が高まる
使われなくなる理由は、多くの場合「難しいから」ではなく「何に使えばよいか思い出せないから」です。振り返りの場で使い道を再確認できると、再び動き出す人が出てきます。
研修の設計では、受講者の経験の差にも配慮が必要です。すでに個人で使っている人と、初めて触る人が同じ席にいると、進度が合いません。事前アンケートで経験を尋ね、実習の席を経験の近い人どうしで組む、経験者には応用の課題を用意する、といった工夫ができます。
また、研修の効果は、アンケートの満足度だけでは測れません。研修から1〜2か月後に、「業務で使った回数」「使った作業の種類」を簡単に聞き取ると、定着の状況が分かります。使われていない場合は、理由(使い方が分からない、ルールが不安、使う場面がない)を聞くと、次の手を打ちやすくなります。
Renode にできること
Renode では、事前アンケートの設計、自社の業務を題材にした教材づくり、研修の実施、研修後の振り返りの場の進行までを承っています。研修費用の一部に助成金が使える場合があるため、計画づくりの段階でご相談いただくことも可能です。制度の内容は変わりますので、最新の要件は公式の案内でご確認ください。
この記事を書いた人
後藤 碧(Renode株式会社 代表取締役)。中小企業の業務整理、AI の試験導入、業務システムの見直しを、現場に入って支援している。