「うちにはデータがたくさんあるはずなのに、活かせていない」。こう感じている会社は多いと思います。売上、受注、問い合わせ、勤怠、在庫など、Excel やシステムの中に記録は溜まっています。
ところが、いざ使おうとすると、ファイルごとに書き方が違う、空欄が多い、担当者しか意味を知らない列がある、といった理由で止まります。専用のツールを入れる前に、次の3歩を踏むことをお勧めします。
1歩目:答えたい問いを1つ決める
データ活用が進まない原因の多くは、「データを集めること」が目的になってしまうことです。最初に決めるのは、どんな問いに答えたいかです。
良い問いの例を挙げます。
- 見積もりを出した案件のうち、受注に至らないものには何か共通点があるか
- 問い合わせが多い月と少ない月で、対応の人数は足りているか
- 納期が遅れる注文には、どんな特徴があるか
悪い例は、「売上データを分析したい」のように、問いが広すぎるものです。誰が、どの判断に使うのかが決まっていないと、見る項目も決まりません。問いは、現場の担当者や経営者が実際に迷っていること、困っていることから拾います。
2歩目:必要な列だけ、同じ書き方にそろえる
問いが決まったら、答えを出すのに必要な列を洗い出します。多くの場合は5〜8列程度です。その列だけ、次の観点でそろえます。
- 名前のゆれ:取引先名が「株式会社〇〇」「〇〇(株)」「〇〇」と混在していないか
- 形式:日付が文字列になっていないか、金額に「円」や「,」が混ざっていないか
- 空欄:空欄の理由(入力漏れか、該当しないのか)を、決めて記録する
- 単位:個数と箱数のように、単位が混ざっていないか
そろえる作業は、最初は手作業で構いません。そろえてみると、そもそも記録されていない項目が見つかることもあります。その場合は、「今後は入力する」というルールを決めるのが次の一手です。過去のデータを無理に補完しようとしないでください。
3歩目:数えて、並べて、現場に見せる
整えたデータから、まず「数える」ことから始めます。ピボットテーブルなどの標準機能で、次のことができます。
- 月ごと、担当者ごと、取引先ごとの件数と合計
- 期間ごとの推移(増えているか、減っているか)
- 上位と下位の並べ替え
出てきた表やグラフは、分析した人だけで解釈せず、必ず現場の担当者に見せて意味を聞きます。数字の背景は、現場の人のほうがよく知っているからです。「この月は大口の案件が重なっていた」といった事情が分かって、初めて数字が使えるようになります。
ここまで進めて初めて、「この判断は毎回同じ基準で行われているか」「基準をルールやモデルにしたほうがよいか」という次の段階に進めます。統計や機械学習を使う場合も、1〜3歩目で整えたデータが前提になります。
注意:個人情報と、小さなデータの扱い
従業員や顧客の個人情報を含むデータを扱うときは、見られる人の範囲と、保管場所を先に決めてください。また、件数が少ないデータでは、見えた傾向が偶然である可能性があります。数十件の傾向だけで大きな判断をせず、現場の感覚と合っているかを併せて確かめます。
3歩を進めていくと、データの入力を担当している人の負担が見えてきます。分析のために入力項目を増やすと、現場の手間が増えて、入力が雑になるという悪循環が起きかねません。項目を増やす場合は、「何のために必要か」「誰が使うのか」を入力する人に伝え、増やした分だけ別の入力を減らす、といった調整を併せて行います。
小さな問いに答えが出ると、次の問いが自然と出てきます。1つずつ積み重ねることで、データを使う習慣が社内に根付いていきます。最初から大きな仕組みを作ろうとしないことが、続けるための基本です。
Renode にできること
Renode では、データの棚卸しから、問いの設定、判断基準の整理、モデルやルールとして業務に組み込む設計までを承ります。まずは、お手元の Excel を拝見して、どの問いなら答えが出せそうかを一緒に考えるところからでもご相談ください。
この記事を書いた人
後藤 碧(Renode株式会社 代表取締役)。中小企業の業務整理、AI の試験導入、業務システムの見直しを、現場に入って支援している。