業務整理

業務の棚卸しは、何を・どこまで書き出せばよいか

「業務の棚卸しが大事」⁠とはよく言われますが、実際に始めようとすると、どこまで細かく書くのか、誰が書くのか、で止まってしまいます。分厚い業務マニュアルを作ろうとして、数週間で挫折する例も珍しくありません。

棚卸しの目的は、完璧な文書を作ることではありません。「どの作業に、誰の時間が、どのくらい使われているか」⁠を、改善の相談ができる程度に見えるようにすることです。この記事では、そのための粒度と手順を紹介します。

書き出す単位は「1回の作業」⁠にする

「受注処理」「請求業務」⁠のような大きな単位で書くと、改善の糸口が見えません。目安は、1人が1回で終える作業の単位です。たとえば次のような粒度です。

書くときは、次の項目を1行にまとめます。

  1. 作業の名前(動詞で終える)
  2. 誰がやっているか(人の名前ではなく、役割でもよい)
  3. どのくらいの頻度か(毎日・毎週・毎月・不定期)
  4. 1回にかかる時間のおおよそ
  5. 使っているシステムや手段(Excel、メール、紙、システム名など)

時間は正確でなくて構いません。「15分くらい」「半日」程度で十分です。正確さより、全部の作業を同じ粒度で並べることのほうが大切です。

書く人と進め方:現場の担当者に、隣で聞く

棚卸しが続かない最大の原因は、現場の担当者に「書いておいてください」⁠と頼んで終わりにすることです。日々の作業は本人にとっては当たり前で、自分では書き出しにくいものです。

進め方としては、次の順がうまくいきやすいです。

  1. 部署を1つ選び、担当者に30分から1時間もらう
  2. その人の隣に座り、普段の1日を、朝から順に再現してもらう
  3. 聞いた内容をその場で上の5項目に書き起こし、本人に確認してもらう
  4. 同じ部署の別の担当者にも同じことをして、やり方の違いを記録する

「同じ作業なのに、人によって手順が違う」ことが見つかるのは、よくあることです。ここは良し悪しを決めず、そのまま記録します。あとで標準の手順を決めるときの材料になります。

見つかった作業を、4つに仕分ける

書き出した作業は、次の4つに仕分けます。

AI を試す候補になるのは、3つ目の「システムで減らせる作業」⁠です。ただし、その前に1つ目と2つ目を片付けるほうが、少ない手間で効果が出ることがよくあります。やめられる作業に AI を使うのは、遠回りです。

仕分けの結果、候補が10個も20個も出てくるのが普通です。すべてに手を付けず、「頻度が高い」「1回の時間が長い」「手順がほぼ決まっている」⁠の3つを満たすものから1つか2つ選びます。選び方の続きは、別の記事「AI の試験導入は、1つの業務から始める」⁠で扱います。

棚卸しを進めるときの注意点が2つあります。1つ目は、人の評価につなげないことです。作業時間を書き出すと、担当者は「自分の仕事ぶりを見られている」⁠と感じて、実際より短く、または都合よく書くことがあります。目的が「楽にするための整理」⁠であり、評価ではないことを、最初に口頭で伝えてください。2つ目は、繁忙期と閑散期の差です。ある月だけの記録では、年間を通じた実態が見えません。月末や期末だけに発生する作業は、頻度の欄に「月末のみ」「年1回」⁠と明記し、忘れずに拾います。

棚卸しの結果は、一度作って終わりではなく、半年に一度ほど見直します。新しいツールを入れたり、担当者が替わったりすると、作業の中身は変わります。最新の一覧があると、次の改善の相談が早く進みます。

Renode にできること

Renode では、棚卸しの日にお客様の現場へ伺い、担当者の隣で作業を見せていただきながら、上の形で一覧にまとめます。その日のうちに内容を共有し、仕分けと、最初に取り組む業務の選定までを一緒に行います。社内で自力で進める場合のチェックシートの相談だけでも承ります。

この記事を書いた人

後藤 碧(Renode株式会社 代表取締役)。中小企業の業務整理、AI の試験導入、業務システムの見直しを、現場に入って支援している。

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